吃音といじめ

吃音についていろいろ書いてきたが、ここまで聞いていると「吃音っていじめの対象になりやすそうじゃない?」と思う人がほとんどだと思う。

しかし、少なくとも私の周りでは、吃音の人間をいじめるような状況にはならなかった。一見、からかいやすいし、どもってる姿は滑稽で笑える、といじめの標的に最適なのでは?と私自身思うのであるが、不思議な事に、吃音を持っている人間に対して、それを真似して少しからかう程度の人間は居たとしても、集団でいじめたりといったようなことには発展しなかった。

それは一体なぜなのだろう?私が思うのは、吃音を持っている人間をからかうことは、人間として恥ずべき行為だ、という道徳心が皆のこころの中に、自然とあるのではないだろうか?ということである。

身体的なコンプレックスをからかう人間が、周囲の人間から見ても最低に映るように、吃音をもっている人間をいじめることも、また同じだと、そういう考えが自然と生まれるのではないか。実際私の周りの人間は、たまにからかってはくるものの、私が落ち込むほどそういった話題を引きずってくることは一度もなかったし、なんら変わりなく接してくれた。このことにはいつも感謝していて、人間の道徳心というものに、 深く感慨を受けたエピソードである。

もし、今吃音が原因でいじめられていたり、からかわれて辛いと感じている人がいたら、私から言えることはひとつである。吃音は恥ずかしい物じゃないから、堂々とひとりの人間として周りの人間とぶつかってほしいということだ。吃音をからかう人間が逆に恥ずかしいのである。私はそう思う。